イベント開催レポート
持続可能な社会を実現する
「ボトルtoボトル」とは?
皆さんは、「ボトルtoボトル」を知っていますか?
「ボトルtoボトル」とは、飲み終わったPETボトルを回収・リサイクルして新しいPETボトルを作る取り組みのこと。
今や私たちの生活には欠かせないPETボトルですが、世界ではポイ捨てなどによって適切に処理されず、海に流出したものが海洋プラスチックごみとして生態系に与える影響が注目されています。
一方で日本では、飲み終わったPETボトルの約9割は回収され、その一部は衣服や食品のトレーなどの原料として再利用されています。
こうした中、飲料業界ではこのしくみを更に発展させ、回収したPETボトルを再び新しいPETボトルに生まれ変わらせる「ボトルtoボトル」と呼ばれる取り組みが始まっています。
今回は、国内でこの「ボトルtoボトル」の取り組みをけん引しているコカ・コーラ ボトラーズジャパンの中村さんにお話を伺いました。
―PETボトルを再度PETボトルにリサイクルすることのメリットは何ですか?
「ボトルtoボトルは、資源が半永久的に循環する仕組みです。PETボトルは、衣類や食品トレーにもリサイクルされますが、その後リサイクルされなければ、ゴミとして焼却されてしまいます。
しかし、PETボトルに生まれ変わらせると、何度もリサイクルをすることができ、また新たな石油由来原料を使用しないため、1本あたりのCO2排出量も約60%削減※できます。
100%のリサイクルが実現できれば、資源がムダなくずっと循環し続け、ごみが生まれることがないのです。」
―PETボトルに再生することで何度でもリサイクルができるのですね。
コカ・コーラ ボトラーズジャパンでは、このリサイクル比率を上げるためにどんな取り組みをされているのでしょうか 。
「日本のコカ・コーラシステムでは『容器の2030年ビジョン』を掲げて、2030年までにすべての自社製品におけるPETボトルの原料を100%サスティナブル素材に切り替えることなどを目指しています。
サスティナブル素材とは『ボトルtoボトル』によるリサイクルPET素材と、植物由来PET素材の合計のことです。当社では2022年にこのサスティナブル素材の使用率50%を達成しました。
日本のコカ・コーラシステム全体でこの目標達成に向け、『設計』『回収』『パートナー』の三つの柱からなる活動に取り組んでいます。」
―それは具体的にどのような活動でしょうか。
「一つ目は、容器の設計やデザインの改善です。『コカ・コーラ』などの旗艦製品へ100%リサイクルPETボトルを導入しており、現在は4ブランド44製品に100%リサイクルPETボトルを使用しています。
また容器1本あたりのPET素材使用量を削減するために2020年より販売しているラベルレス製品も10ブランド22製品へ拡充したり、
容器自体の軽量化にも継続的に取り組んでいます。」
―確かに最近では、オンラインショップだけでなく店頭でもラベルレスの商品を見かけるようになり、 この活動の広がりを感じますね。残り2つはどのような活動なのでしょうか。
「二つ目は、回収です。全国の自治体やパートナー企業の皆様とともに、使用済みPETボトルの回収やリサイクルの啓発、『ボトルtoボトル』の推進に取り組み、
私たちが販売した製品と同等量の容器を回収&リサイクルすることを目指しています。最近では製品のラベルに『リサイクルしてね』のロゴを入れて生活者の方にもわかりやすく、
PETボトルの適切なリサイクルを呼びかけています。そして三つ目はパートナーです。
全国の自治体やパートナー企業の皆様をはじめ、政府や、飲料業界、地域社会とも連携して誰もが参加しやすいリサイクルの仕組みの構築と、
その仕組みの維持に取り組みながら、『ボトルtoボトル』を推進しています。」
―1社だけで取り組みを進めているのではないのですね。
「この取り組みは決して私たちだけで進められるものではありません。消費者の皆様のご理解、リサイクルへのご協力が不可欠なのはもちろんのこと、回収にご協力いただく小売店や自治体の方々、
回収業者、そして回収したPETボトルをリサイクルする業者の方々、包材メーカーなど…様々なパートナー様との連携があってはじめて
実現するものなのです。」
―ちなみに、コカ・コーラ ボトラーズジャパンが、このような取り組みを進める背景にはどのような考えがあるのでしょうか。
「私たちは飲料メーカーとして、お客様・お得意様に安全・安心で高品質の商品をお届けすること目指しています。と、同時に安定的に商品の提供を行っていくには、きれいな水や持続可能な環境の保全が必要です。
そこで企業としても、本業を通じた社会課題の解決を行うことが不可欠なのです。容器においては、
先述した『容器の2030年ビジョン』に沿って、日本国内のプラスチック資源の循環利用を推進しています。」
リサイクルを
日常のあたりまえに
そして今回、コカ・コーラ ボトラーズジャパンと共同でこの取り組みを展開しているのがスギ薬局だ。
今回の取り組みについて同社の
杉山さんにお話を伺いました。
―スギ薬局では、今回の「ボトルtoボトル」の 取り組みをどのように推進されているのでしょうか。
「中部エリアを中心に、スギ薬局の6店舗に使用済みPETボトルの回収機を設置しています。 回収機の使い方もとても簡単で、ラベル・キャップを取りきれいに洗ったPETボトルを店頭の回収ボックスに入れるだけです。 回収されたPETボトルはその後リサイクルされ、新しいPETボトルに生まれ変わります。」
―なぜ今回、コカ・コーラ ボトラーズジャパンと共同でこの取り組みを展開しているのでしょうか。
「『ボトルtoボトル』というキーワードだけを聞いても、何の取り組みかピンと来なかったり、どこか遠い取り組みに感じてしまう方も多いと思います。
そこで、普段から生活者の方と接点のある私たちが飲料メーカーとの間に立ち、この取り組みを展開することで『ボトルtoボトル』が日常的に意識いただける活動になるのではと考えました。」
―確かにいつも商品を購入する場所に回収機があると、この取り組みがより身近になりますね。ドラッグストアである「スギ薬局」は今回のテーマである「環境」とは一見遠そうな印象も受けますが、 なぜこのような分野の取り組みにも力を入れられているのでしょうか。
「私たちスギ薬局では “地域の健康ステーション”を目指し、“いつでも”・“どこでも”・“気楽”に質の高いヘルスケアサービスを受けることができる環境を生活者の方々にご提供したいと考えています。
こうした企業になるためには、日頃から地域の方々の生活に密着した企業である必要があります。そこで私たちも『環境』をはじめ、
地域社会に貢献できるテーマを複数掲げて、その課題解決にも取り組んでいるんです。」
―そういった両社の想いがマッチし、今回の取り組みが実現したということですね。
循環型社会の実現に向けた
両社の挑戦
―この「ボトルtoボトル」の取り組みを進めるうえで課題はあるのでしょうか。
「新しいPETボトルにリサイクルするためには、使用済みのボトルをきれいな状態で回収することが重要です。
リサイクルボックスにごみが入ってしまうと、本来回収できるPETボトルが入りきらなくなって回収できなくなり、必要のない分別作業も発生してしまいます。
また、PETボトルの中に飲み物が残っていたり、異物やゴミが入っているとリサイクルできなくなってしまいます。」(中村さん)
―それだけでリサイクルができなくなってしまうんですね。
「そうなんです。ですので、私たちは『ボトルtoボトル」の取り組みを広めるだけでなく、この活動が必要な意味を皆様にしっかり発信していきたいと考えています。
きれいな状態でPETボトルが回収できれば、また新しい資源として再利用し、何度も循環利用することができます!
そのために今後もパートナー企業の皆様と協力をして、生活者の皆様へ取り組みの発信を進めていきたいと考えています。」(中村さん)
―スギ薬局 杉山さんは今後についていかがでしょうか。
「これまで『健康』分野における取り組みは、自社がメインとなって進めてきたのですが、今回の『ボトルtoボトル』の取り組みのように今後は自社だけでは実現が難しかった取り組みにもチャレンジしたいと考えています。
例えば、『健康』×『環境』をテーマにした取り組み等、今後もスギ薬局らしさのある取り組みを地域の皆様に発信していければと思います。また『ボトルtoボトル』の取り組みについても、今後より多くの生活者の方にご参加いただけるよう、
回収機の設置店舗を拡大したり、ご参加いただいた方になにかサービスを還元したり、皆様が参加したいと思えるような仕掛けを考えていきたいと思います。」(杉山さん)
PETボトルのリサイクル率が100%になる社会を目指して、両社の挑戦はこれからも続きます。